棚の奥に、いつ買ったか思い出せないワインが1本ある。
そんな家は、けっこう多いと思います。いただきものだったり、旅行先で買ったまま忘れていたり。ラベルには年号が書いてあるのに、賞味期限はどこにも見当たりません。
開けていいのか、もう遅いのか。この記事では、現役のソムリエ目線で「ワインは何年もつのか」「寝かせるなら赤と白どちらか」をまとめました。後半では、子どもが生まれた年のワインの選び方と、20年の置き方にも触れています。
ワインに賞味期限が書いていないのは、なぜか
お酒は、賞味期限の表示を省略してよいことになっています。ワインもそのひとつです。探しても見つからないのは当たり前で、書き忘れではありません。
かわりに書いてあるのが、ぶどうを収穫した年(ヴィンテージ)です。2018と書いてあれば、2018年に採れたぶどうで造られたということ。期限ではなく、出発点が書いてあります。
1,000〜2,000円のワインは、3年以内が目安です
ワインは寝かせるほどおいしくなる、と思っている方は多いです。ただ実際には、長く置いて良くなるワインのほうが少ないです。
あくまで大まかな目安ですが、次のように考えています。
- 1,000円、2,000円くらいのデイリーワインは、買って3年以内においしく飲めるものが多いです
- 5,000円くらいまでのワインは、赤も白も、10年ほどの長期熟成は必要ないものが多いです
ワインの個性にもよるので、絶対ではありません。それでも家にある1本がこの価格帯なら、寝かせておく理由はあまりないと思います。
いまのワインは、早いうちから飲めるように、うまく造られているものが増えました。長期熟成が期待できるのは、フランスのボルドーやブルゴーニュといった主要な産地の上級ワイン。そしてカリフォルニア、ドイツ、イタリアなどの一部の上級ワインに限られます。
基本的に、いいぶどうからしか長期熟成に向くワインはできないと思います。熟成していくのは、丁寧に収穫したぶどうを使い、丁寧に造られた一部のワインだけです。
寝かせるなら、赤と白どちらか
赤です。
理由は渋みにあります。渋みは、時間に耐える力です。年月が経つあいだ、ワインの骨格を支えてくれます。渋みのしっかりした赤ワインは、置いておくほど角が取れて、深みが出てきます。
白には、その渋みがほとんどありません。全体として見れば、白より赤のほうが長く置けるものが多いです。
長く置ける白も、あります
「白は寝かせられない」と言い切ってしまうと、それはそれで違います。フランスワインだと、すぐに思い浮かぶのは2つのパターンです。
ひとつは、ブルゴーニュ地方のシャルドネの最上級ワイン。樽で熟成させた、いいぶどうを使ったしっかりめの白ワインで、長期熟成も期待できます。
もうひとつは、甘口のワイン。アルコールや糖度が高いと、熟成のポテンシャルが上がります。いちばん長く熟成するのは、ボルドー地方の貴腐(きふ)ワインと呼ばれる極甘口のワインです。一部には、100年に迫る熟成に耐えるものもあります。

ただ、どちらも「一部の」上級ワインの話です。割合で見れば、長く置けるのはやはり赤が中心になります。
子どもが生まれた年のワインを買うなら
ここからが、いちばんお伝えしたい話です。
お子さんが生まれた年のワインを買って、成人したときに一緒に開ける。素敵な考えだと思います。ただ選び方を間違えると、20年後に開けたとき、弱ってしまった1本になっていることがあります。
20年寝かせるなら、赤の長期熟成型を探してください。渋みが時間を支えてくれるからです。
選ぶときは「産地」から入る
長期熟成型の赤を見分けるには、ある程度の知識と経験がいると思います。産地、価格、造り方、生産者は、全部つながっていて、混じり合っているからです。
熟成の可能性がある産地のワインは、値段も上がります。造っているのも、良い生産者であることが多いです。産地ごとによく使われる造り方もあるので、そこも少しずつ連動しています。
そのうえで、ひとつだけ挙げるなら産地からです。産地が決まると、その土地に合ったぶどう品種がわかってきます。そこから生産者、造り、価格帯と、全部がつながっていくからです。
生産者の個性を知っていれば、もう一歩踏み込めます。早くから楽しめる赤を造る人なのか。最初は飲みにくくても、長い熟成で進化していく造りの人なのか。ここも選ぶ基準になります。
20年、どこに置くか
20年間ワインを管理するのは、結構難しいと思います。
本気で管理するなら、それに見合ったワインセラーが必要です。厳密に言えば、安い普通のセラーより、長期熟成向けのいいセラーのほうが、状態は良くなると思います。
管理のできるお店やショップに預けるのも、わりといい選択肢です。ただ、その年数分の費用がかかることは覚えておいてください。
最初から20年置くと分かっているなら、常温という選択はないと思います。ワインがいちばん弱いのは、温度の変化です。強いて言うなら、温度変化の少ない床下や、場所を作って土に埋めるという方法も、選択肢に入ってきます。
家にある古い1本、開ける前に見ておきたいところ
見た目だけで100%判断できるわけではありません。それでも、判断材料になるところはあります。
- コルクが瓶から盛り上がっている、または引っ込んでいる
温度変化が多かった、置き場所の環境が悪かった、という目安になります - キャップシール(コルクを覆う包み)に液がついている、コルクの側面や上の面が赤く変色している
中のワインが吹きこぼれた跡です。ちょっと危ないかな、という目安になります - ワインが濁っている、量があまりにも減っている
劣化を疑います
どれも総合的な判断なので、当てはまっても、まだ飲めるワインはあります。あくまでひとつの目安として見てください。
まとめ
- ワインに賞味期限は書いていません。書いてあるのは、ぶどうを収穫した年です
- 1,000〜2,000円のデイリーワインは3年以内、5,000円くらいまでなら10年の熟成は要らないものが多いです
- 長く置けるのは、渋みを持った赤が中心。白でも、ブルゴーニュのシャルドネの最上級や貴腐ワインなど、一部は長期熟成します
- 子どもの生まれ年に買うなら、赤の長期熟成型を。選ぶときは産地から
- 20年置くなら、セラーか、預けるか。いちばんの敵は温度変化です
棚の奥の1本も、生まれ年の1本も、開ける日を楽しみに待てるように。この記事が、そのための目安になればうれしいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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